【高校数学を見直してみよう】

高校数学を見直してみよう[1]:定義は最重要!

高校数学では「計算が正確に出きること」が重要視されます。従って、$f(x) = x^n$ や $f(x) = \log x$ を躊躇なく微分出来ることは「試験で点数を取るため」に非常に重要です。

しかし、それはどうして?と尋ねられた時、正確な答えを即座に返せる人はどのくらいいるでしょうか?
それには、「微分の定義」を知っていなければなりません。

大学における数学では、様々な概念の「定義」が厳密になされ、それを使って論理を展開します。
「定義」が曖昧だと、議論をすることさえ出来ません。

今回は、高校で習う範囲で「定義」がどのようになされており、それが産み出す副産物についてお伝え致します。
テーマは「微分」です。

関数 $f(x)$ の $x = x_0$ における微分の定義は次のようなものです。これは高校の教科書にも書かれていると思います。
\begin{eqnarray}
\left.\frac{{\rm d} f(x)}{{\rm d} x}\right|_{x = x_0} &\equiv& \lim_{\Delta x \rightarrow 0} \frac{f(x_0 + \Delta x) – f(x_0)}{\Delta x}
\end{eqnarray}
あるいは、もう少し単純に $x$ における微分として
\begin{eqnarray}
\frac{{\rm d} f(x)}{{\rm d} x} &\equiv& \lim_{\Delta x \rightarrow 0} \frac{f(x + \Delta x) – f(x)}{\Delta x}
\end{eqnarray}
と定義されているかも知れません。両方ともに同じことなので、ここでは後者を採用することにします。

さて、先ず $n$ を自然数として関数 $f(x) = x^n$ の微分を考えましょう。
もちろん、答えは $f'(x) = n x^{n – 1}$ となることは皆さんご存知ですね。
それを「微分の定義」に従って導こうというのがここでの狙いです。

\begin{eqnarray}
\frac{{\rm d} f(x)}{{\rm d} x} &\equiv& \lim_{\Delta x \rightarrow 0} \frac{(x + \Delta x)^n – x^n}{\Delta x} \\
&=& \lim_{\Delta x \rightarrow 0} \frac{(x^n + n x^{n – 1} \Delta x + {}_n C_2 x^{n – 2} (\Delta x)^2 + \cdots + (\Delta x)^n) – x^n}{\Delta x} \\
&=& \lim_{\Delta x \rightarrow 0} \frac{n x^{n – 1} \Delta x + {}_n C_2 x^{n – 2} (\Delta x)^2 + \cdots + (\Delta x)^n}{\Delta x} \\
&=& n x^{n – 1}
\end{eqnarray}

ちゃんと、然るべき式が得られました。

同じように $f(x) = \sin x$ について計算してみましょう。
\begin{eqnarray}
\frac{{\rm d} f(x)}{{\rm d} x} &\equiv& \lim_{\Delta x \rightarrow 0} \frac{\sin(x + \Delta x) – \sin x}{\Delta x} \\
&=& \lim_{\Delta x \rightarrow 0} \frac{(\sin x \cos\Delta x + \cos x \sin \Delta x) – \sin x}{\Delta x} \\
&=& \cos x
\end{eqnarray}
ここで
\begin{eqnarray}
\lim_{\Delta x \rightarrow 0} \frac{\sin x(\cos\Delta x – 1)}{\Delta x} &=& 0 \\
\lim_{\Delta x \rightarrow 0} \frac{\sin x}{\Delta x} &=& 1
\end{eqnarray}
を使いました。
どちらも、ロピタルの定理を使えば簡単に示せる式です。

同様にして $f(x) = \cos x$ について計算してみましょう。
\begin{eqnarray}
\frac{{\rm d} f(x)}{{\rm d} x} &\equiv& \lim_{\Delta x \rightarrow 0} \frac{\cos(x + \Delta x) – \cos x}{\Delta x} \\
&=& \lim_{\Delta x \rightarrow 0} \frac{(\cos x \cos\Delta x – \sin x \sin \Delta x) – \cos x}{\Delta x} \\
&=& – \sin x
\end{eqnarray}
ここで
\begin{eqnarray}
\lim_{\Delta x \rightarrow 0} \frac{\cos x(\cos\Delta x – 1)}{\Delta x} &=& 0 \\
\lim_{\Delta x \rightarrow 0} \frac{\sin x}{\Delta x} &=& 1
\end{eqnarray}
を使いました。

関数 $f(x) = {\rm e}^x$ についてはどうでしょうか?
\begin{eqnarray}
\frac{{\rm d} f(x)}{{\rm d} x} &\equiv& \lim_{\Delta x \rightarrow 0} \frac{{\rm e}^{x + \Delta x} – {\rm e}^{x}}{\Delta x} \\
&=& {\rm e}^x \lim_{\Delta x \rightarrow 0} \frac{{\rm e}^{\Delta x} – 1}{\Delta x} \\
&=& {\rm e}^x
\end{eqnarray}
ここで
\begin{eqnarray}
\lim_{\Delta x \rightarrow 0} \frac{{\rm e}^{\Delta x} – 1}{\Delta x} &=& 1
\end{eqnarray}
を使いました。これもロピタルの定理を使えば簡単に示せます。

さて、では関数 $f(x) = \log x$ はどうでしょうか?
定義式を書いてみましょう。
\begin{eqnarray}
\frac{{\rm d} f(x)}{{\rm d} x} &\equiv& \lim_{\Delta x \rightarrow 0} \frac{\log(x + \Delta x) – \log x}{\Delta x}
\end{eqnarray}
この極限を求めるのは、ちょっと工夫が必要そうです。

でも、$log x$ は ${\rm e}^x$ の逆関数ですから、逆関数の微分を使って微分することが出来ます。
\begin{eqnarray}
y &=& {\rm e}^x \\
x &=& \log y \\
\frac{{\rm d} x}{{\rm d} y} &=& {\rm e}^x \\
&=& y \\
\frac{{\rm d} y}{{\rm d} x} &=& \frac{1}{y}
\end{eqnarray}
となりますから
\begin{eqnarray}
\frac{{\rm d} (\log x)}{{\rm d} x} &=& \frac{1}{y}
\end{eqnarray}
が得られます。

この結果と、$\log x$ の微分の定義式を見比べてみましょう。
\begin{eqnarray}
\frac{{\rm d} f(x)}{{\rm d} x} &\equiv& \lim_{\Delta x \rightarrow 0} \frac{\log(x + \Delta x) – \log x}{\Delta x} \\
&=& \lim_{\Delta x \rightarrow 0} \frac{\log\left(\frac{x + \Delta x}{x}\right)}{\Delta x} \\
&=& \lim_{\Delta x \rightarrow 0} \log\left(1 + \frac{\Delta x}{x}\right)^{\frac{1}{\Delta x}} \\
&=& \lim_{\Delta x \rightarrow 0} \frac{1}{x} \log\left(1 + \frac{\Delta x}{x}\right)^{\frac{x}{\Delta x}}
\end{eqnarray}
これが、逆関数の微分を使った結果 $\frac{1}{x}$ と等しいのですから
\begin{eqnarray}
\lim_{\Delta x \rightarrow 0} \left(1 + \frac{\Delta x}{x}\right)^{\frac{x}{\Delta x}} &=& {\rm e}
\end{eqnarray}
が言えます。すなわち
\begin{eqnarray}
\lim_{n \rightarrow \infty} \left(1 + \frac{1}{n}\right)^n &=& {\rm e}
\end{eqnarray}
が示されたことになります。
この式は、教科書によっては ${\rm e}$ の定義とされているかも知れません。

しかし、このように単に「微分の定義」から、このような結果を引き出すことも出来るのです。

ぜひ、高校数学における「様々な定義」を見直してみて下さい。
面白いことが見つけられるかも知れませんよ。

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