【高校では教えてくれない裏ワザ】

高校の先生は教えてくれない裏ワザ[9]:コーシー・シュワルツの不等式の証明

コーシー・シュワルツ(Cauchy-Schwarz)の不等式とは、次のような関係式です。

コーシー・シュワルツの不等式

$2n$ 個の実数 $a_i, b_i \in \mathbb{R}\ (i = 1, 2,\cdots n)$ について、次の不等式が成り立つ。
\begin{eqnarray}
\left(\sum_{i = 1}^{n} a_i b_i\right)^2 \le \left(\sum_{i = 1}^{n} a_i^2\right) \left(\sum_{i = 1}^{n} b_i^2\right)
\end{eqnarray}
ここで、等号成立は、$a_1 : a_2 : \cdots : a_n = b_1 : b_2 : \cdots : b_n$ が成り立つ時である。

この不等式をコーシー・シュワルツ(Cauchy-Schwarz)の不等式と言う。

$n = 2$ の時を考えましょう。

証明1

コーシー・シュワルツの不等式の主張は、4つの実数 $a_1, a_2, b_1, b_2 \in \mathbb{R}$ に対して
\begin{eqnarray}
\left(a_1 b_1 + a_2 b_2\right)^2 \le \left(a_1^2 + a_2^2\right) \left(b_1^2 + b_2^2\right)
\end{eqnarray}
です。

今、$a_1, a_2$ を成分に持つ2次元ベクトル $\vec{a} = (a_1, a_2)$ と、$b_1, b_2$ を成分に持つ2次元ベクトル $\vec{b} = (b_1, b_2)$ を考えましょう。この時、2つのベクトルの内積は
\begin{eqnarray}
\vec{a} \cdot \vec{b} &=& (a_1 b_1 + a_2 b_2)
\end{eqnarray}
となります。一方で、2つのベクトル $\vec{a}, \vec{b}$ のなす角を $\theta$ とすれば
\begin{eqnarray}
\vec{a} \cdot \vec{b} &=& |\vec{a}| |\vec{b}| \cos\theta
\end{eqnarray}
が成り立ちます。

ここで、$|\cos\theta| \le 1$ であることを考えれば、コーシー・シュワルツの不等式が成り立つ事が分かります。
等号成立は $\theta = 0, \pi$ の時であり、$\vec{a}, \vec{b}$ が互いに平行である時です。この条件は $a_1 : a_2 = b_1 : b_2$ を意味します。

証明2

もっと、直接的に証明してみましょう。
\begin{eqnarray}
\left(a_1 b_1 + a_2 b_2\right)^2 \le \left(a_1^2 + a_2^2\right) \left(b_1^2 + b_2^2\right)
\end{eqnarray}
の (右辺) – (左辺) を考えてみましょう。
\begin{eqnarray}
(a_1^2 + a_2^2)(b_1^2 + b_2^2) – (a_1 b_1 + a_2 b_2)^2 &=&
(a_1^2 b_1^2 + a_1^2 b_2^2 + a_2^2 b_1^2 + a_2^2 b_2^2) –
(a_1^2 b_1^2 + 2 a_1 a_2 b_1 b_2 + a_2^2 b_2^2) \\
&=& a_1^2 b_2^2 – 2 a_1 a_2 b_1 b_2 + a_2^2 b_1^2 \\
&=& (a_1 b_2 – a_2 b_1)^2 \ge 0
\end{eqnarray}
となります。等号成立は $a_1 b_2 – a_2 b_1$ のときであり、これは $a_1 : a_2 = b_1 : b_2$ を意味します。

同じようにして、$n \ge 3$ の場合も証明出来ますが、ここでは、もう少しエレガントな方法をご紹介しましょう。

証明3

次の関数 $f(x)$ を考える。
\begin{eqnarray}
f(x) = \sum_{i = 1}^n \left( a_i x – b_i\right)^2
\end{eqnarray}

$f(x)$ は、全ての $i$ に対して $a_i = 0$ でない限り $x$ についての2次関数となる。
全ての $i$ に対して $a_i = 0$ となる時には、明らかに不等式が等しいことが分かるので、少なくとも1つの $a_i$ について $0$ ではないとする。

明らかに、$f(x) \ge 0$ であるので、この2次式の判別式は $0$ 以下である。
従って
\begin{eqnarray}
f(x) &=& \left(\sum_{i = 1}^n a_i^2\right) x^2 – 2 \left(\sum_{i = 1}^n a_i b_i\right) x + \left(\sum_{i = 1}^n b_i^2 \right)
\end{eqnarray}
の判別式を考えると
\begin{eqnarray}
\left(\sum_{i = 1}^n a_i b_i \right)^2 – \left(\sum_{i = 1}^n a_i^2 \right) \left(\sum_{i = 1}^n b_i^2 \right) \le 0
\end{eqnarray}
となり、求める不等式が得られる。等号成立は、全ての $i$ について $a_i x – b_i =0$ なる時であるので、等号成立条件も得られる。

どうでしょうか?最初に $f(x)$ を考えるところが上手いですね。

さて、このコーシー・シュワルツの不等式ですが、どのような時に使えるのでしょうか?
具体的な問題をご紹介しましょう。

問題

$x, y$ を共に実数とする。$x^2 + y^2 = 1$ なる条件を満たす時に、$2 x + 3 y$ の最大値を求めよ。

解答

コーシー・シュワルツの不等式より
\begin{eqnarray}
(2 x + 3 y)^2 \le (x^2 + y^2) (2^2 + 3^2) = 13
\end{eqnarray}
従って、$2 x + 3 y \le \sqrt{13}$ であり、等号成立は $x : y = 2 : 3$ のとき、すなわち、$y/x = 3/2$ のときである。

問題

正の実数 $x_i\ (i = 1, 2, 3)$ に対して
\begin{eqnarray}
x_1 x_2 x_3 (x_1 + x_2 + x_3) \le (x_1^3 x_2 + x_2^3 x_3 + x_3^3 x_1)
\end{eqnarray}
を示せ。

解答

両辺を $x_1 x_2 x_3 \neq 0$ で割ると、示すべき式は
\begin{eqnarray}
(x_1 + x_2 + x_3) \le \left(\frac{x_1^2}{x_3} + \frac{x_2^2}{x_1} + \frac{x_3^2}{x_2}\right)
\end{eqnarray}
となる。

コーシー・シュワルツの不等式より
\begin{eqnarray}
\left(\frac{x_1}{\sqrt{x_3}} \sqrt{x_3} + \frac{x_2}{\sqrt{x_1}} \sqrt{x_1} + \frac{x_3}{\sqrt{x_2}}\sqrt{x_2}\right)^2
\le \left(\frac{x_1^2}{x_3} + \frac{x_2^2}{x_1} + \frac{x_3^2}{x_2}\right) (x_1 + x_2 + x_3)
\end{eqnarray}
この式の両辺を $(x_1 + x_2 + x_3 > 0$ で割れば、求める式が得られる。

どうでしょうか?コーシー・シュワルツの不等式を上手く使えば、不等式の問題を鮮やかに解くことが出来ます。
ぜひ、応用してみて下さい。

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