【高校では教えてくれない裏ワザ】

高校では教えてくれない裏ワザ[6]:微分の意外な使い方(2)

次の定積分を求めよ。
\begin{eqnarray}
I_1 &=& \lim_{A \rightarrow \infty} \int_0^{A} x {\rm e}^{- x} {\rm d} x
\end{eqnarray}

以後、上記のような極限を簡略化して
\begin{eqnarray}
\int_0^{\infty} x {\rm e}^{- x} {\rm d} x
\end{eqnarray}
と書くことにする。その意味は、上記のように、$A$ までの定積分において $A \rightarrow \infty$ の極限を取るものとする。

このような問題においては、迷わずに部分積分をするのが定石であろう。具体的に求めてみよう。

通常の答

\begin{eqnarray}
I_1 &=& \int_0^{\infty} x {\rm e}^{- x} {\rm d} x \\
&=& \left[- x {\rm e}^{- x}\right]_0^{\infty} + \int_0^{\infty} {\rm e}^{- x} {\rm d} x \\
&=& \left[- {\rm e}^{- x}\right]_0^{\infty} \\
&=& 1
\end{eqnarray}

同様に $I_2$ についても求めてみよう。
\begin{eqnarray}
I_2 &=& \int_0^{\infty} x^2 {\rm e}^{- x} {\rm d} x \\
&=& \left[ – x^2 {\rm e}^{- x}\right]_0^{\infty} + \int_)^{\infty} 2 x {\rm e}^{- x} {\rm d} x \\
&=& \left[- 2 x {\rm d}^{- x}\right]_0^{\infty} + \int_0^{\infty} 2 {\rm e}^{- x} {\rm d} x \\
&=& \left[ 2 {\rm e}^{- x}\right]_0^{\infty} \\
&=& 2
\end{eqnarray}
どうやら、$n$ を自然数とするとき
\begin{eqnarray}
I_n &=& n!
\end{eqnarray}
が成り立ちそうですね。

でも、$I_n$ の場合には、$n$ 回部分積分しなくてはなりません。それはちょっと面倒ですね。
答えが $I_n = n!$ と見えた方は、数学的帰納法を用いれば1回の部分積分で証明出来ますが。。。

この積分をちょっと別の見方をしてみましょう。

裏ワザを用いた答

$\alpha > 0$ として
\begin{eqnarray}
I(\alpha) &\equiv& \int_0^{- \alpha x} {\rm e}^{- \alpha x}{\rm d} x
\end{eqnarray}
を考える。$y = \alpha x$ と置換することにより
\begin{eqnarray}
I(\alpha) &=& \frac{1}{\alpha}\int_0^{\infty} {\rm e}^{ – y} {\rm d} y \\
&=& \frac{1}{\alpha}
\end{eqnarray}
と求まる。

ここで、
\begin{eqnarray}
\frac{{\rm d}I(\alpha)}{{\rm d} \alpha} &=& \frac{\rm d}{{\rm d} \alpha} \int_0^{\infty} {\rm e}^{- \alpha x} {\rm d} x \\
&=& \int_0^{\infty} \frac{\rm d}{{\rm d} \alpha} {\rm e}^{- \alpha x} {\rm d} x \\
&=& \int_0^{\infty} (- x) {\rm e}^{- \alpha x} {\rm d} x
\end{eqnarray}
に注意すると
\begin{eqnarray}
I_1 = – \left.\frac{{\rm d}I(\alpha)}{{\rm d} \alpha} \right|_{\alpha = 1}
\end{eqnarray}
が成り立つことが分かります。

一方で、
\begin{eqnarray}
\frac{{\rm d}I(\alpha)}{{\rm d} \alpha} &=& \frac{\rm d}{{\rm d} \alpha} \frac{1}{\alpha} \\
&=& – \frac{1}{\alpha^2} \\
\left.\frac{{\rm d}I(\alpha)}{{\rm d} \alpha}\right|_{\alpha = 1} &=& – 1
\end{eqnarray}
となりますから、$I_1 = 1$ が言えました。

$I_2$ を求めるには、$I(\alpha)$ を $\alpha$ で2回微分すれば良いだけです。
\begin{eqnarray}
\frac{{\rm d}^2 I(\alpha)}{{\rm d} \alpha^2} &=& \frac{{\rm d}^2}{{\rm d} \alpha^2}\int_0^{\infty} {\rm e}^{- \alpha x} {\rm d} x \\
&=& \int_0^{\infty} x^2 {\rm e}^{- \alpha x} {\rm d} x \\
\left.\frac{{\rm d}^2 I(\alpha)}{{\rm d} \alpha^2}\right|_{\alpha = 1} &=& I_2
\end{eqnarray}

一方で
\begin{eqnarray}
\frac{{\rm d}^2}{{\rm d} \alpha^2} \left(\frac{1}{\alpha}\right) &=& \frac{2}{\alpha^3}
\end{eqnarray}
なので、$I_2 = 2$ が言えました。

$I_n$ を求めるには $I(\alpha)$ を $n$ 回 $\alpha$ で微分して $\alpha = 1$ を代入すれば良いので、$I_n = n!$ は明らかですね。

ただし、ここで示した計算方法は厳密に言うと、正しい結果を与えるというには少々議論が必要です。

なぜなら、積分と微分の順序を変えているからです。積分してから微分するのと、微分してから積分するのは、必ずしも等しくないかも知れないからです。

その理由は極限のとり方にあります。微分も積分も定義に極限を使っていますね。その極限の取る順序を変えても結果を変えないという保証が必要なのです。

詳しい議論は大学数学の範囲になるので、ここでは避けますが、簡単な反例を挙げて、その危うさを実感して下さい。

$m, n$ を自然数として、数列 $\{a_m\}, \{b_n\}$ を考えます。
\begin{eqnarray}
a_m &\equiv& m \\
b_n &\equiv& \frac{1}{n}
\end{eqnarray}
この2つの数列から、新しい数列 $\{a_m b_n\}$ を考えましょう。
すなわち
\begin{eqnarray}
a_m b_n = \frac{m}{n}
\end{eqnarray}
となります。

ここで2種類の極限を考えてみましょう。
\begin{eqnarray}
\lim_{n \rightarrow \infty} \lim_{m \rightarrow \infty} a_m b_n &=& \lim_{n \rightarrow \infty} \lim_{m \rightarrow \infty} \frac{m}{n} = \infty \\
\lim_{m \rightarrow \infty} \lim_{n \rightarrow \infty} a_m b_n &=& \lim_{m \rightarrow \infty} \lim_{n \rightarrow \infty} \frac{m}{n} = 0
\end{eqnarray}
このように2つの値が違ってしまいました。

この例からも分かるように、極限を取る順番は勝手に変えると極限の値が変わるかも知れないので、順番を変えても値が変わらないという条件が必要なのです。上記の例は、順番を変えても極限の値が変わらない例となっており、正しい答えを与えるのです。

従って、この裏ワザは、答案に書くことはお勧めしません。計算のチェックに使うのが良いでしょう。

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