【大学入試問題に垣間見れる大学数学】

大学入試問題に垣間見れる大学数学[1]:ガンマ関数

「高校では教えてくれない裏ワザ[6]:微分の意外な使い方(2)」の動画で
\begin{eqnarray}
n! &=& \int_0^{\infty} t^n {\rm e}^{- x} {\rm d} x
\end{eqnarray}
という式を示しました。実はこの右辺は $n$ を変数とする関数として見て ${\mit \Gamma}$(ガンマ)関数と呼ばれており、大学で特殊関数論や複素関数論といった授業で登場します。

上記の式は $n$ が自然数ですが、この右辺の式を使って $n$ を実数、あるいは複素数にも拡張して、$n!$ の拡張版を定義しようという試みです。

上記のような積分は実は大学入試問題にもしばしば現れています。例えば

18年 愛知県大

$n$ を自然数、${\rm e}$ を自然対数の底とし
\begin{eqnarray}
F_n &=& \lim_{s \rightarrow \infty} \int_0^s {\rm e}^{- t} t^{n – 1} {\rm d} t \\
G_n &=& \lim_{s \rightarrow \infty} \int_0^s {\rm e}^{- n t} t^n {\rm d} t
\end{eqnarray}
とする。このとき、以下の問いに答えよ。

(1) $F_1$ を求めよ。

(2) $F_{n + 1}$ を $n$ と $F_n$ を用いて表わせ。

(3) $F_{n + 1}$ を $n$ のみを用いて表わせ。

(4) $G_n$ を $n$ のみを用いて表わせ。

(5) ${\displaystyle \lim_{n \rightarrow \infty} G_n}$ を求めよ。

ここで、$F_n$ がまさに、この前紹介した積分になっていますね。

実際の$\Gamma$ 関数の定義をご紹介しましょう。
\begin{eqnarray}
{\mit \Gamma}(z) &=& \int_0^{\infty} t^{z – 1} {\rm e}^{- t} {\rm d} t
\end{eqnarray}
これは実部が正となる複素数 $z$ について定義されています。

少しだけ ${\mit \Gamma}$ 関数の性質を見ておきましょう。${\mit \Gamma}(z + 1)$ を1回部分積分してみましょう。
\begin{eqnarray}
{\mit \Gamma}(z + 1) &=& \int_0^{\infty} t^{z} {\rm e}^{- t} {\rm d} t \\
&=& \left[- t^{z} {\rm e}^{- x}\right]_0^{\infty} + z \int_0^{\infty} t^{z – 1} {\rm e}^{- t} {\rm d} t \\
&=& z {\mit \Gamma}(z)
\end{eqnarray}
すなわち
\begin{eqnarray}
{\mit \Gamma}(z + 1) &=& z {\mit \Gamma}(z)
\end{eqnarray}
が成り立ちます。
$z$ が自然数 $n$ であれば、この式を繰り返して用いることにより
\begin{eqnarray}
{\mit \Gamma}(n + 1) &=& n {\mit \Gamma}(n) \\
&=& n (n – 1) {\mit \Gamma}(n – 1) \\
&=& n (n – 1) \cdots 2 \cdot 1 \cdot {\mit \Gamma}(1) \\
&=& n!
\end{eqnarray}
となり、${\mit \Gamma}(n + 1)$ が $n!$ の自然な拡張となっていることが分かります。ここで、先の動画で ${\mit \Gamma}(1) = 1$ を使いました。

ここで、${\mit \Gamma}(z + 1) = z {\mit \Gamma}(z)$ という関係式が本質的で、このような関係を満たす正則な関数(複素平面上で微分可能であることを正則と言います。)は、上に示した ${\mit \Gamma}$ 関数しかないことが示せます。

これは、ちょっと不思議な感じがするかも知れませんね。
なぜなら、実変数の関数であれば、自然数 $n$ の時に値が $n!$ を持つような微分可能な関数はいくらでも存在するからです。

複素数を変数とした関数が「微分可能」というのは、「実数」を変数とした「微分可能」よりも、かなり強い条件なのです。実際に、複素数を変数とした関数が1回微分かのうであるとすると、なんと任意の回数微分することが出来ることが示せます。

実変数では、1回微分出来ても2回微分出来るとは限りませんね。

具体例を挙げましょう。
\begin{eqnarray}
f(x) &=& 2 x^2\ (x \le 0) \\
f(x) &=& x^2\ (x >0)
\end{eqnarray}
という関数を考えましょう。$f(x)$ は原点において微分可能で $f'(0) = 0$ です。原点以外の点では、もちろん微分可能です。

では、$f'(x)$ を考えてみましょう。
\begin{eqnarray}
f'(x) &=& 4 x\ (x \le 0) \\
f'(x) &=& 2 x\ (x > 0)
\end{eqnarray}
この式を見れば分かるように、$f'(x)$ は原点で連続ではありますが、微分可能ではありません。

このように、1回微分可能であっても2回微分可能であるとは限りません。

さて、ここでクイズです。

Quiz

・ある点において、2回微分可能であるが、3回微分可能ではない関数の具体例を求めよ。
・余力があれば、$n$ を自然数とするとき、$n$ 回微分可能であるが、$n + 1$ 回微分可能でない関数の具体例を求めよ。

ちょっと話しが脇道に逸れましたが、複素数を変数とする関数を考える時に、$n!$ は上記の式で「一意的に」決まってしまうのです。その意味で、自然な $n!$ の拡張となっています。

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